Difyは、GPT-4oやClaudeなどの大規模言語モデル(LLM)を活用したAIアプリを、ノーコード・ローコードで開発できるオープンソースプラットフォームです。
しかし、Difyの導入にはデータベースやキャッシュなどのセットアップが必要なため、手動で構築しようとすると手間がかかります。
そこで活躍するのがDockerです。

本記事では、Dockerを活用してDifyをセットアップする方法や使い方、運用のポイントについて詳しく解説していきます。
Difyとは?Dockerでの運用が適している理由
AIを活用したアプリケーション開発が急速に進む中で、Difyはノーコード・ローコードの開発環境として注目を集めています。
特に、GPT-4oやClaudeなどの大規模言語モデル(LLM)を活用したアプリを手軽に構築できる点が特徴ですが、Difyを適切に運用するためには環境構築が不可欠であり、そこで便利なのがDockerです。
Dockerはコンテナ技術を用いることで、開発環境を簡単に構築・管理できるツールです。
Difyのように複数の依存関係を持つアプリケーションの場合、通常の手順でインストールしようとすると、データベースやキャッシュの設定などが煩雑になってしまいます。
しかし、Dockerを利用すれば、これらの依存関係を事前に設定したコンテナイメージとして一括管理できるため、環境構築の手間を大幅に削減可能です。
Difyの概要と主な機能


Difyは、AIを活用したアプリケーションを手軽に構築できるオープンソースのプラットフォームです。
ノーコードまたはローコードで開発が可能なため、エンジニアだけでなく、非プログラマーでも直感的にAIアプリを作成できる点が大きな魅力です。
主な機能
- ノーコード/ローコード開発
- プログラミング不要でAIアプリを作成できるGUIを提供
- 多様なAIモデルの統合
- GPT-4o、Claude、Geminiなどの言語モデルと連携可能
- API連携
- 外部のアプリケーションと統合し、AIの活用範囲を拡張できる
- カスタムデータ対応
- 独自のデータセットを利用して、特定の用途に最適化したAIを開発可能
- ローカル環境での動作
- インターネットに依存せず、プライバシーを確保した開発が可能
これらの機能を活用することで、ユーザーは独自のAIチャットボットや、テキスト生成ツール、FAQ自動応答システムなどを簡単に構築できます。



特に、企業が内部向けにAIツールを開発する際にDifyの柔軟性が活かされるでしょう。




Dockerを使うメリットとは?



Difyをローカル環境で運用する方法はいくつかありますが、特にDockerを活用すると、セットアップが簡単になり、運用の自由度が向上するというメリットがあります。
1. 環境構築の簡略化
Difyを手動でセットアップしようとすると、PostgreSQLやRedisのインストール、各種設定の変更が必要になります。
Dockerを利用すれば、Docker Composeを使って数行のコマンドを実行するだけで、Difyの全環境を一括で構築できます。
2. OSに依存しない運用
DockerはWindows、Mac、Linuxのすべてで統一された環境を提供することで、OSごとに異なる依存関係を気にすることなく、同じ手順でDifyをセットアップ可能です。
3. ポータビリティの向上
Dockerコンテナを使えば、Difyの環境をバックアップしやすく、別のPCやサーバーへ簡単に移行できます。
環境の再現性が高いため、チーム開発時にも役立ちます。
4. アップデートや管理の容易さ
Dockerを使用すると、Difyのバージョンアップや構成変更が容易です。
たとえば、新しいバージョンがリリースされた場合、以下のようなコマンドを実行するだけで更新できます。
git pull origin main
docker-compose up –build -d
5. ローカル環境での開発・テストが可能
DifyをDocker上で動かせば、インターネットに接続しなくてもローカル環境で安全にテストできるので、機密データを扱うプロジェクトでもセキュリティを確保しながら開発を進めることが可能です。
Dockerを使ったDifyインストール手順
DifyをDocker環境でセットアップするには、以下の手順を順番に進めることで、スムーズに環境構築が可能です。
本ガイドでは、Docker Composeを利用した方法を詳しく説明します。



この方法を用いることで、必要なコンテナ(アプリケーション本体、データベース、キャッシュなど)を一括で管理し、簡単にセットアップが可能になります。


まずは以下の手順で、Dockerをインストールしてください。
Windowsの場合
- Docker公式サイト からDocker Desktop for Windowsをダウンロード
- インストーラーを実行し、指示に従ってインストール
- インストール後、Docker Desktopを起動し、WSL 2を有効化(必要に応じて)
Macの場合
- Docker公式サイト からDocker Desktop for Macをダウンロード
- .dmgファイルを開き、アプリケーションフォルダへ移動
- Docker Desktopを起動し、セットアップを完了



Dockerのインストール後、下記 を実行し正しくインストールされているか確認してください。
docker –version
Difyの最新バージョンを取得するため、GitHubのリポジトリをクローンします。
git clone https://github.com/langgenius/dify.git
cd dify/docker
リポジトリ内には、docker-compose.yml という設定ファイルが含まれており、これを利用して必要なコンテナを一括管理します。
Difyの動作には、いくつかの環境変数の設定が必要です。
デフォルトの設定を使用する場合、.env.example ファイルをコピーして .env ファイルを作成します。
cp .env.example .env
必要に応じて、データベース接続情報やAPIキーを編集してください。
特に、デフォルトのポート番号(8080)が他のアプリと競合する場合は、.env ファイル内で変更できます。
Dockerを起動する前に、現在のDockerのバージョンを確認してください。
docker compose version
Docker Composeを使ってDifyを起動します。
docker-compose up -d
docker compose up -d
-d オプションを付けることで、バックグラウンドでコンテナが動作し、このコマンドを実行すると以下のコンテナが立ち上がります。
- Dify本体(Webアプリ)
- PostgreSQL(データベース)
- Redis(キャッシュ管理)



起動後、以下のコマンドで正常にコンテナが動作しているか確認してください。
docker ps
NAME IMAGE COMMAND SERVICE CREATED STATUS PORTS
docker-api-1 langgenius/dify-api:0.3.2 "/entrypoint.sh" api 4 seconds ago Up 2 seconds 80/tcp, 5001/tcp
docker-db-1 postgres:15-alpine "docker-entrypoint.s…" db 4 seconds ago Up 2 seconds 0.0.0.0:5432->5432/tcp
docker-nginx-1 nginx:latest "/docker-entrypoint.…" nginx 4 seconds ago Up 2 seconds 0.0.0.0:80->80/tcp
docker-redis-1 redis:6-alpine "docker-entrypoint.s…" redis 4 seconds ago Up 3 seconds 6379/tcp
docker-weaviate-1 semitechnologies/weaviate:1.18.4 "/bin/weaviate --hos…" weaviate 4 seconds ago Up 3 seconds
docker-web-1 langgenius/dify-web:0.3.2 "/entrypoint.sh" web 4 seconds ago Up 3 seconds 80/tcp, 3000/tcp
docker-worker-1 langgenius/dify-api:0.3.2 "/entrypoint.sh" worker 4 seconds ago Up 2 seconds 80/tcp, 5001/tcp
一覧に上記のようなコンテナが表示されていれば、正常に起動しています。
ブラウザを開き、http://localhost/install にアクセスします。





Difyの管理者アカウント登録画面が表示され、初回セットアップが求められればインストールは完了です。
インストール画面でInternal Server Errorが表示される場合
まずコンテナの起動状況を確認してください。
docker compose ps
続いてインスタンスのログを確認します。
docker logs <container id>
error: could not change permissions of directory "/var/lib/postgresql/data/pgdata": Operation not permitted.
上記のエラーが起こっている場合は、docker-compose.yamlファイルにある# The postgres database.箇所以下にあるvolumesを下記のように修正します。
修正前
volumes:
– ./volumes/db/data:/var/lib/postgresql/data
— ファイル最下部 —
volumes: oradata: dify_es01_data:
修正後
volumes:
– db_data:/var/lib/postgresql/data
— ファイル最下部 —
volumes:
oradata:
dify_es01_data:
db_data:



これで起動するはずです。
初回ログイン時に管理者アカウントを作成し、Difyの設定を進めていきましょう。
Docker環境でのDifyの使い方
Difyのインストールが完了したら、実際に使い始めてみましょう。
DifyはGUIベースで操作できるため、コードを記述しなくてもAIアプリを作成可能です。
Difyの基本機能は「アプリ」を作成し、大規模言語モデル(LLM)を活用してテキストを生成することです。
以下の手順で、新しいアプリを作成できます。
- 「最初から作成」ボタンをクリック
- テンプレートを選択し、アプリの名前を入力(チャットボット、FAQ、文章生成など)
- 使用するAIモデルを選択(GPT-4o、Claude、Geminiなど)
- 設定を保存し、テストを実行



アプリ作成後、ユーザーインターフェースのカスタマイズやAPI連携を行うことができます。
Difyで作成したAIアプリを他のアプリケーションと統合するためには、APIキーを取得し、外部から呼び出す必要があります。
- アプリ作成後画面右上にある「公開する」ボタンクリックし、「APIリファレンスにアクセス」をクリック
- 画面右上にある「APIキー」ボタンをクリックし、「新しいシークレットキーを作成」をクリック
- 生成されたキーをコピーし、外部アプリで使用



このAPIキーを使えば、DifyのAIアプリを外部のWebアプリやモバイルアプリと統合できます。
Difyの管理画面では、アプリの動作を細かくカスタマイズできます。
- プロンプトの調整:AIの出力を最適化
- データの利用:カスタムデータを活用することで、回答精度を向上
- アクセス制御:ユーザーの管理と権限設定
Docker環境でのDifyの運用ポイント
DifyをDocker環境で運用する際には、適切な管理とメンテナンスが重要です。
1. 設定のカスタマイズ
Difyはデフォルトの設定のままでも動作しますが、実際の運用では環境変数や設定ファイルを適切に調整することが推奨されます。
環境変数の設定(.env ファイル)
Difyでは、.env ファイルを編集することでさまざまな動作をカスタマイズできます。
たとえば以下のような設定項目があります。
- データベースの設定:PostgreSQLのホスト名、ポート、ユーザー、パスワード
- Redisの設定:キャッシュの有効期限や保存ポリシー
- ポート番号の変更:8080 以外のポートでDifyを動作させたい場合
- ログレベルの設定:開発用に詳細なログを出力する場合
設定を変更した場合下記コマンドで、変更を反映させるためにDockerコンテナを再起動する必要があります。
docker-compose down
docker-compose up -d
2. アップデートの管理
Difyはオープンソースプロジェクトとして活発に開発が進められており、定期的に新機能の追加やバグ修正が行われているため、常に最新の状態を維持することが重要です。
アップデートの手順
最新の変更を取得するために、Difyのディレクトリで以下のコマンドを実行します。
gi pull origin main
更新されたイメージを取得し、Dockerコンテナを再構築します。
docker compose up –build -d



この方法で、Difyの最新版を反映させることが可能です。
バージョン固定の方法
運用環境ではDifyのバージョンを固定することで、意図しない変更による不具合を防ぐことができます。
docker-compose.ymlファイル内の image タグに、特定のバージョンを指定することでバージョン固定が可能です。
services:
app:
image: langgenius/dify:v0.5.0



こうすることで、最新のアップデートが適用されることなく、安定したバージョンで運用を続けられます。
3. ログ管理とエラーハンドリング
Difyの運用では、エラー発生時に適切な対応を行うためにログの確認が必須です。
すべてのコンテナのログを確認する場合は、以下のコマンドを使用します。
docker-compose logs -f



ひとつひとつのコンテナログを確認する場合、以下のコマンドを使用します。
docker logs -f <コンテナ名またはコンテナID>
4.よくあるエラーと対処法
エラー | 原因 | 解決策 |
connection refused | PostgreSQLなどが起動していない、または指定されたポートで稼働していない | docker ps でコンテナの状態を確認し、必要なら再起動 |
port is already in use | 既にポートが使用中 | .env ファイルでポートを変更し、再起動 |
permission denied | 権限不足 | sudo docker-compose up -d を試す |
out of memory | メモリ不足 | 不要なコンテナを停止し、メモリを確保 |



こうしたトラブルに備えて、ログの確認と適切な対応策を準備することが運用の安定性を高めるポイントです。
DockerでDifyを運用する際のよくある質問
Docker環境でDifyを運用する際のよくある質問について回答します。
Dockerは無料で使えますか?
Docker自体は無料で利用できますが、企業向けのDocker Desktopには利用条件があり、大規模な商用環境では有料プランが必要になる場合があります。
詳細はDockerの公式ページ を確認してください。
インストールでつまずいたときの対処法は?
Difyのインストールで問題が発生した場合、以下を試してください。
コンテナの状態を確認する
docker ps -a



停止しているコンテナがないかチェックします。
Dockerのログを確認する
docker compose logs



エラーメッセージを参考に原因を特定します。
コンテナを再起動する
docker compose down
docker compose up -d



これで問題が解決することが多いです。
インストール時のInternal Server Errorについてはこちらをご確認ください。
DockerなしでもDifyは使える?
Dockerを使わなくてもDifyをインストールできます。
ただし、PostgreSQLやRedisなどの手動設定が必要となり、セットアップが複雑になるため、Dockerを利用する方が簡単かつ効率的です。
商用利用は可能?
Difyはオープンソースプロジェクトですが、商用利用を検討する場合はライセンス規約を確認してください。
詳しくは、公式リポジトリの LICENSE ファイルを確認し、必要に応じて適切なライセンスを取得してください。
まとめ
本記事では、Dockerを活用したDifyのローカル環境構築と運用方法について詳しく解説しました。
以下のポイントを押さえておけば、スムーズな運用が可能になります。
- Dockerを使うことで、環境構築が簡単になり、ポータビリティが向上する
- インストールはDocker Composeを利用するのが最も手軽
- 運用時は環境変数のカスタマイズや定期的なアップデート管理が重要
- エラー発生時はDockerのログを確認し、適切なトラブルシューティングを実施



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