Stable Diffusionは、テキストから自由自在に画像を生成できる強力なAIツールです。
しかし、「手や指が奇形になる」「背景が汚くなる」「リアルな顔が作れない」といった問題に悩まされることはありませんか?

そんな時に役立つのがネガティブプロンプトです。
適切に設定することで、不要な要素を除去し、より理想的な画像を生成することができます。
しかし、「どの単語を設定すればいいのかわからない」「入力しても期待通りの効果が得られない」と感じる方も多いでしょう。
本記事では、ネガティブプロンプトの基本概念から実写画像生成での活用法、具体的なテンプレート一覧、活用テクニックまでを詳しく解説します。



この記事を読めば、ネガティブプロンプトを適切に活用し、思い通りの画像を作れるようになるでしょう。
Stable Diffusionのネガティブプロンプトとは


Stable Diffusionのネガティブプロンプトとは、画像生成時に「含めたくない要素」を指定するプロンプトのことです。



これにより、意図しないノイズや歪み、不自然な表現を抑えることができます。
適切なネガティブプロンプトを設定することで、品質の向上や違和感の軽減が可能になるなど、理想の画像を作りやすくなります。
ネガティブプロンプトの種類
ネガティブプロンプトとは、Stable Diffusionが画像を生成する際に「含めてほしくない要素」を明示的に指定するプロンプトのことです。



ネガティブプロンプトには、大きく分けて以下の3種類があります。
1.画質改善用のプロンプト


例:「blurry, low quality, jpeg artifacts, noisy」
目的:画像のシャープネスを向上させ、くっきりした仕上がりにする
2.人体・パーツ修正用のプロンプト


例:「deformed hands, extra fingers, missing limbs, fused fingers」
目的:手足の異常を防ぎ、自然な人体を生成する
3.表現制御用のプロンプト


例:「nsfw, nude, violent, disfigured」
目的:特定の表現(暴力・過激な内容など)を除外する
ポジティブプロンプトとの違い
Stable Diffusionでは、「どんな画像を作りたいか」を指定するポジティブプロンプトと、「どんな要素を排除したいか」を指定するネガティブプロンプトを組み合わせることで、理想的な画像を生成できます。
例えば、リアルなポートレートを作りたい場合
✅ ポジティブプロンプト
a beautiful woman, highly detailed, ultra-realistic, cinematic lighting
✅ ネガティブプロンプト
blurry, deformed hands, unnatural skin, jpeg artifacts, low resolution



このように、ネガティブプロンプトを適切に設定することで、より高品質な画像を作成することができます。
ネガティブプロンプトを使うメリット


ネガティブプロンプトを活用すると、画像のクオリティが向上し、意図しない要素を排除できるというメリットがあります。



詳しく説明していきましょう
実写との違和感を軽減する
Stable Diffusionで実写風の画像を生成する際、「不気味の谷」現象が発生しやすくなります。
これは、AIが人間に近いけれど微妙に違和感のある画像を作ってしまうことを指します。



以下のネガティブプロンプトを設定すると、肌の質感がより自然になり、リアルなポートレートが生成しやすくなります。
uncanny valley, unrealistic, unnatural skin, doll-like, waxy texture
特定の要素を除去し、意図した表現に近づける
AIが勝手に帽子や眼鏡を追加してしまうことがあります。
これを防ぐには、以下のネガティブプロンプトが有効です。
hat, glasses, jewelry, tattoo, watermark



シンプルなポートレートが生成しやすくなります。
不要なノイズを排除し、クオリティを向上させる
Stable Diffusionは、ランダムなノイズを含んだ画像を生成することがあるため、意図しないモザイクや荒れたテクスチャが発生することがあります。
この問題を解決するために、以下のネガティブプロンプトを使用します。
low quality, blurry, grainy, out of focus, noisy



生成される画像がより鮮明で高品質になります。
キャラクターの造形ミスを防ぐ
Stable Diffusionは、しばしば手足の形状を正しく生成できないことがあります。



以下のように設定することによって、より自然なキャラクターを生成できます。
deformed hands, extra fingers, missing fingers, fused fingers, distorted face
ネガティブプロンプトの効果的な使い方
ネガティブプロンプトを使う際のポイントは、適度な単語の選択と強調の調整です。
- 優先度の高い要素を先に記述
(例:「worst quality, low res, blurry」) - 不要な表現を徹底排除する
(例:「extra arms, malformed limbs」) - LoRAやControlNetと組み合わせて最適化



Stable Diffusion Web UI(AUTOMATIC1111版など)を使う場合、プロンプト入力欄の「Negative prompt」に指定することで、簡単に適用可能です。
Stable Diffusionのネガティブプロンプトテンプレート


ここでは、用途別にすぐに使えるネガティブプロンプトのテンプレートを紹介します。



コピペして活用できるので、ぜひ試してみてください。
汎用的な高品質化テンプレ
例(コピペ用)
low quality, blurry, out of focus, grainy, jpeg artifacts, noisy, watermark
解説
- low quality, blurry, out of focus:ぼやけや低解像度を防ぎ、クリアな画像を作成
- jpeg artifacts, grainy, noisy:圧縮ノイズやザラつきを抑える
- watermark:透かしやロゴを排除



このテンプレートは、画質を向上させ、画像全体をクリアで精細な仕上がりにするために使います。
人体の異常を防ぐテンプレ
例(コピペ用)
deformed hands, extra fingers, missing fingers, fused fingers, mutated limbs, malformed body
解説
- deformed hands, extra fingers:指の本数が増えたり、形が崩れるのを防ぐ
- missing fingers, fused fingers:指が消えたり、くっついたりするのを抑制
- malformed body:全体的な人体の崩れを軽減



Stable Diffusionでは、特に手や指の形状が崩れることが多いため、それを防ぐためのプロンプトです。
実写画像向けテンプレ
例(コピペ用)
uncanny valley, unrealistic, doll-like, waxy skin, plasticky texture, artificial face
解説
- uncanny valley, unrealistic:不自然なリアリズムを排除
- doll-like, waxy skin, plasticky texture:肌がツルツルしすぎるのを防ぐ
- artificial face:機械的な顔つきを抑制



実写風の画像を作る際に、不自然なテクスチャやAI特有の「人形っぽさ」を抑えるためのテンプレートです。
背景をクリアにするテンプレ
例(コピペ用)
cluttered background, messy, random objects, overcomplicated, distracting elements
解説
- cluttered background, messy:乱雑な背景を防ぐ
- random objects, distracting elements:意図しないオブジェクトを排除
- overcomplicated:背景が複雑になりすぎるのを抑える



背景が散らかって見えたり、余計なノイズが入ったりするのを防ぐためのプロンプトです。
特定の服装や小道具を排除するテンプレ
例(コピペ用)
hat, glasses, jewelry, tattoo, uniform, logo, watermark
解説
- hat, glasses, jewelry:帽子・眼鏡・アクセサリーを防ぐ
- tattoo, uniform:タトゥーや制服を避ける
- logo, watermark:ロゴや透かしを削除



Stable Diffusionは、モデルの学習データの影響で意図しない服装やアクセサリーを追加することがあります。
キャラクターの表情を自然にするテンプレ
例(コピペ用)
unnatural smile, creepy, emotionless, stiff face, robotic expression
解説
- unnatural smile, creepy:不自然な笑顔や不気味な表情を抑制
- emotionless, robotic expression:感情のない顔を防ぐ
- stiff face:表情が硬くならないように調整



表情が硬すぎる、または不気味になるのを防ぐためのテンプレートです。
ライティングや影の問題を抑えるテンプレ
例(コピペ用)
overexposed, underexposed, harsh lighting, unnatural shadows, flat lighting
解説
- overexposed, underexposed:露出オーバーや暗すぎる写真を回避
- harsh lighting, unnatural shadows:影のバランスを改善
- flat lighting:照明がのっぺりした感じになるのを防ぐ



照明が極端すぎたり、影が不自然になったりするのを防ぐためのプロンプトです。
ネガティブプロンプトがうまく機能しないときの対処法


ネガティブプロンプトを設定しても期待した効果が得られない場合、以下の点をチェックしてみてください。
1. プロンプトの順序を変更する
ネガティブプロンプトの単語の並び順が影響を与えることがあるので、重要な要素を先頭に配置してみてください。
2. 強調の調整を行う
AUTOMATIC1111のWeb UIでは、プロンプトの強調を括弧 ((word))
や数値 (word:1.0)
で指定できます。
例えば、指の異常をより強く抑制したい場合
((deformed hands)), ((extra fingers)), ((missing fingers))
括弧の数 | 倍率 |
(キーワード) | 1.1倍 |
((キーワード)) | 1.21倍 |
(((キーワード))) | 1.33倍 |
((((キーワード)))) | 1.46倍 |



キーワードを何重の括弧で囲むかで重みの倍率が異なり、括弧の数が1つ増えるごとに1.1のn乗といった具合で増えます。
(deformed hands:1.2), (extra fingers:1.2), (missing fingers:1.2)



括弧を付ける仕様よりも、キーワードの後ろに数値を付与する方が見やすさと操作性に優れているので、こちらの使用をおすすめします。
3. LoRAやControlNetと併用する
LoRA(Low-Rank Adaptation)やControlNetを活用すると、より高度な調整が可能になります。
人体の造形ミスを減らしたい場合、人体構造を制御するLoRAを導入すると効果的です。
ネガティブプロンプトに使える拡張機能『embedding』


Stable Diffusionでは、通常のテキストベースのネガティブプロンプトだけでなく、「embedding(埋め込み学習モデル)」を活用することで、より高品質な画像生成が可能になります。
embeddingとは?
- 特定のプロンプトの効果を強化する事前学習済みデータです。
- 事前にトレーニングされた「ネガティブプロンプト専用のデータ」を活用し、より高度な制御が可能になります。
- 追加でテキストを入力しなくても、単一のembeddingを指定するだけで効果を発揮します。



Stable Diffusionでよく使用されるネガティブembeddingを以下に紹介します。
1. EasyNegative(万能型ネガティブembedding)


- 特徴:画像全体の品質向上を目的とした、最も汎用的なネガティブembedding
- 効果:ぼやけ・ノイズ・低品質なレンダリングを抑え、リアルな仕上がりにする
- 適用方法:「Negative prompt」に
EasyNegative
を入力するだけで適用
おすすめ用途💡



汎用的に画質を改善したいとき
特定のジャンルに依存しないネガティブ補正をしたいとき
2. Deep Negative V1.x(より高度な画質改善embedding)


- 特徴:EasyNegativeよりも強力な画質補正が可能なembedding
- 効果:不自然なアーティファクト、人工的なテクスチャ、ノイズを大幅に抑制
- 適用方法:
ng_deepnegative_v1_75t
をネガティブプロンプト欄に入力
おすすめ用途💡



・実写系や高精細なポートレート画像の生成
・より高度なディテール補正をしたい場合
EasyNegativeとの違い



EasyNegativeは「軽い補正」、Deep Negativeは「より強力な補正」
画質を極限まで向上させたい場合は、Deep Negativeのほうが適しています
3. badhandv4(手・指の異常を防ぐ特化型embedding)


- 特徴:Stable Diffusionが苦手とする「手・指の造形ミス」を改善する専用embedding
- 効果:指が多すぎる・短すぎる・ねじれているなどの異常を抑制
- 適用方法:
badhandv4
をネガティブプロンプト欄に入力
おすすめ用途💡



・ポートレートやキャラクターの手を綺麗に生成したいとき
・手がうまく描画されず、奇形になりやすい場合
・deformed hands, extra fingers などのネガティブプロンプトと併用するとさらに効果的
4. CyberRealistic Negative(実写系AI画像向けの補正embedding)


- 特徴:AI特有の「作り物感」や「CGっぽさ」を軽減し、よりリアルな表現に近づける
- 効果:肌の質感、目や髪の細かいディテール、ライティングのリアリズムを向上
- 適用方法:
CyberRealistic_Negative_〇〇
とCyberRealistic_Negative_〇〇_NEG
をネガティブプロンプトに指定
※〇〇は使用しているモデル(pony v1.0用、SDXL v1.0用など)によって変わります。
おすすめ用途💡



・実写系LoRAモデルと組み合わせると効果抜群
・AIくささを減らし、自然な写真風の画像を生成
・実写ポートレート生成に特におすすめ
5. Style Asian Less(アジア人の特徴を抑えるembedding)


- 特徴:使用しているモデル(checkpoint)が「デフォルトでアジア系の特徴を強調しやすい」場合、その問題を抑える
- 効果:欧米系の顔立ちをより明確に生成しやすくなる
- 適用方法:
Asian-Less2-Neg
をネガティブプロンプトに追加
おすすめ用途💡



・欧米系のキャラクターを生成時、アジア系の特徴を減らしたいとき
・リアルな顔のバリエーションを増やしたいとき
・特に「リアル系モデル」でのキャラクター生成時に効果を発揮
まとめ
ネガティブプロンプトを活用すれば、不要な要素を排除し、より目的に合った理想的な結果を得ることができます。
特に、文章作成や画像生成では、意図しない表現や不必要な要素を防ぐことで、質の高いアウトプットが可能になるでしょう。
- ネガティブプロンプトを使うと画像の品質が向上する
- コピペで使えるテンプレートを活用すると簡単に調整可能
- 人体の異常、ノイズ、不自然な表現を防ぐために必須



この記事を参考に、ぜひネガティブプロンプトを試して、理想の画像を生成してください!