AI技術の進化に伴い、「プロンプトエンジニアリング」の重要性が高まっており、特にChatGPTのような自然言語処理モデルでは、質問や命令の表現方法が出力の質に大きく影響します。
本記事では、プロンプトエンジニアリングの基本と、ChatGPTを最大限に活用するためのコツと、AIをより効果的に使いこなし、その潜在能力を引き出すことができるようになる「プロンプトエンジニアリング」について深堀します。
プロンプトエンジニアリングとは?
プロンプトエンジニアリングとは、人工知能(AI)に特定のタスクを効果的に実行させるために、質問や命令をどのように表現するかという技術のことです。
特に、ChatGPTにおいては、プロンプトの設計がモデルの出力の質と関連性に大きく影響し、AIに対する指示を最適化し期待される回答を引き出すための戦略が研究されています。
プロンプトエンジニアリングの重要性
プロンプトエンジニアリングの重要性は、AIの応用範囲が広がるにつれて増し、AIと人とのコミュニケーションを最適化することにあります。
正確かつ効果的なプロンプトの設計は、期待される結果を得るために不可欠です。
良いプロンプトは、モデルに対して明確な指示を与え、適切な指示・命令を提供することで、モデルがより正確にタスクを理解し、望ましい出力を生成する手助けをします。
これは、特に情報検索、コンテンツ生成、問題解決などの複雑なタスクをAIに委ねる際に顕著です。
また、プロンプトエンジニアリングは、AIモデルの限界を克服し、その性能を最大限に引き出すための鍵となります。
適切なプロンプトによって、AIは与えられた情報をより深く理解し、より関連性の高い創造的な、あるいは具体的な解答を提供することが可能になり、AIの応用範囲を拡大し、より人間らしい対話や高度なタスクの遂行を可能にします。
さらに、プロンプトエンジニアリングは、AI技術の普及と共に、教育、ビジネス、エンターテイメントなど多岐にわたる分野で応用の可能性を広げており、適切なプロンプト設計により、これらの分野におけるAIの利用効率と効果を大きく向上させることができるのです。
プロンプトエンジニアリングはAI技術を用いた価値を促進し、私たちの生活・仕事の質を向上させる重要な役割を果たしています。
プロンプトにおける4つの基本構成
プロンプトを構成する際には、その目的、対象とするAIの特性、および期待される出力の種類を考慮する必要があります。
- 明確な指示
- 背景情報の提供
- 追加情報の提示
- 出力形式の指定
上記がプロンプトに必要な基本構成であり、これらの要素を適切に組み合わせることで、AIに対する理解を深め、より有用な回答を引き出すことが可能になります。
【簡単ガイド】プロンプト設計のコツ5選
ここでは「プロンプトにおける4つの基本構成」にプラス1(★)したコツをご紹介します。
- 明確かつ具体的に指示をする
- 指示をした背景を提供する
- 追加情報を与える
- 言い回しを変えて試行を繰り返す★
- 出力形式を指定する
それでは詳しく見ていきましょう。
1.明確かつ具体的に指示をする
プロンプトエンジニアリングにおける最も基本的な原則の一つが、AIに対して明確かつ具体的に指示をすることです。
このアプローチは、AIが要求されたタスクを正確に理解し、期待に沿った結果を提供するための土台を築きます。
明確な指示とは、AIに対して具体的なアクションや応答を求めることを明示することを意味します。
たとえば「テクノロジーに関する記事を書いてください」という曖昧なプロンプトではなく、「最新のAI技術に関する1000語の詳細記事を書いてください」と指定することで、期待されるアウトプットの範囲と詳細度が明確になります。
具体性は、AIに対する期待を正確に伝えるために不可欠です。具体性には、タスクの目的・対象となるトピックの範囲、必要とされる情報の種類や詳細度、使用される言語やスタイルなどが含まれます。
具体的な指示を提供することで、AIは与えられた情報を基に最も適切な回答やコンテンツを生成することが可能になり、結果として要求に対する満足度が高まります。
たとえば下記のように「屋根のデザイン」に関する曖昧な質問をしてみました。
曖昧な質問では予想通り、様々な側面があると回答が返ってきました。
次に具体性と明確性を加えた質問を行ってみます。
「2種類」のデザインによる「効果」の違いといった、具体性と明確性を付与したところ、欲しい情報にたどり着くことができました。
AIに対しては、可能な限り明確かつ具体的な指示をすることが重要です。
曖昧な表現や一般的すぎる質問は、期待した回答を得られない原因になりがちなので、目的を明確にし、AIが理解しやすい言葉を選んでください。
2.指示をした背景を提供する
次に重要なのは、AIに対して指示を出す際、その背景や文脈を提供することです。
背景情報は、AIが与えられたタスクの意図や目的を深く理解するのに役立ち、より適切で有用な回答を生成するためのキーとなります。
たとえば、特定のプロジェクトや研究に関連する質問をする場合、そのプロジェクトの概要や目的、関連する特定の技術や理論の説明を加えることで、AIはより文脈に沿った回答を提供することができます。
1の屋根のデザインに関する質問に背景情報を記載した以下の質問をしてみたところ…
認知バイアスの注意はあるものの、「温暖な気候で雨量の多い地域には三角屋根が適している」といった答えが理由と共に提供されました。
こういった背景情報を提供することで、AIは与えられたタスクをより広い文脈の中で解釈し、その応答をより適切に調整することができます。
これは、AIが単に単語やフレーズの表面的な意味だけでなく、その背後にある意図や目的を理解するのを助けるためです。
プロンプトに背景情報を含めることで、AIは与えられたタスクの文脈をより深く理解することができ、より関連性の高い回答が得られるようになります。
3.追加情報を与える
プロンプトには、AIが回答を生成するために必要な追加のデータや情報を含めることが可能です。
追加情報をプロンプトに含めることは、AIがより精密かつ有用な回答を生成するために役立ち、関連するデータ、前提条件、具体的な例やケーススタディなどが含まれる場合があります。
これは、AIがタスクの範囲をより正確に理解し、より具体的かつ詳細な回答を提供するための基盤となります。
たとえば、市場調査の分析を依頼する際に、特定の業界や市場の傾向、対象となる顧客層、競合の概況などの詳細を提供することで、AIはより深くそのトピックを掘り下げ、有意義なインサイトを提供することが可能になります。
追加情報は、AIが提供する解答の精度と関連性を高めるために不可欠です。
引き続き「屋根のデザイン」をサンプルに下記のように「追加データ」を送信してみたところ、追加情報に対するデータとそれを踏まえたうえでの結論が返ってきました。
追加データはAIが参照できる事実、統計、あるいは既存の研究結果など、具体的な情報源が有効的なデータとなるので、AIが学習済みの情報と与えられた情報に基づいた、信頼性の高い回答をすることが可能になります。
特定の問題解決や情報提供を求める場合、関連する追加情報をプロンプトに含めることで、より具体的かつ適切な解答を生成しやすくなるよ。
4.言い回しを変えて試行を繰り返す
プロンプトエンジニアリングの中でも特に重要なテクニックの一つが、言い回しを変えて試行を繰り返すことです。
このアプローチは、AIの自然言語理解能力の限界に対処し、期待する応答を得るためのキーとなります。
たとえば、初めのプロンプトが期待した結果を生み出さなかった場合、異なる言い回しや表現を試すことで、AIがタスクの意図をより正確に把握し、望ましい回答を提供する可能性が高まります。
AIは、特定のキーワードやフレーズがAIの理解や回答の質に大きく影響を及ぼすことに基づいていることに気が付くことでしょう。
このプロセスでは、質問の構造を変える、異なる同義語を使用する、より具体的または抽象的な表現を試すなど、さまざまな戦略が用いられます。
たとえば、「最新のAI技術トレンドは何ですか?」というプロンプトを「2024年に注目されるAIのイノベーションにはどのようなものがありますか?」と変えることで、より詳細かつ特定の情報を引き出すことができるかもしれません。
引き続き「屋根のデザイン」をサンプルに、同じ内容で言い回しを「箇条書き」から「文章」に変更してみました。
利点と考慮は同じような内容ですが、先ほど出ていた「結果」は返ってきませんでした……。
このように、言い回しを変えることで、AIの解釈の幅を広げ、より豊富な情報やクリエイティブなアウトプットを得ることが可能になり、試行錯誤を重ねることでAIとのコミュニケーションをより効果的にし、目的に合った高品質な結果を導き出すことができるのです。
5.出力形式を指定する
プロンプトの設計では、AIに期待する出力の形式を明確に指定することも重要です。
出力形式には、テキストの長さ、形式(例:レポート、リスト、対話)、特定のフォーマット要件などが含まれます。この指定により、AIは与えられた指示に基づいて、より適切な形式で情報を整理し、提供することができます。
出力形式を指定することは、特に情報の提示方法やデータの解釈において特定の要件がある場合に有効です。
たとえば、データ分析の結果を要約形式で提供するよう指示すると、AIは重要な情報を簡潔にまとめ、分かりやすい形で提供してくれます。
また、特定のフォーマットやスタイルガイドに従ってコンテンツを生成するよう指示することで、AIはその要件に合わせた出力を生成することが可能になります。
ここまで「屋根のデザイン」に関してのやりとりを、戸建てを建てたいAさんと、ハウスメーカーの営業Bさんの「対話形式」に出力変換してみました。
営業Bさんのセリフはすでに出力されていたものに近いですが、ユーザーAさんはセリフが増えていますね!
このように、出力形式を明確に指定することで、AIの応答をより有用かつ目的に合った形で得ることができるので、情報の処理や理解が容易になります。
ChatGPTで活用できるプロンプトのテクニック
ChatGPTでは、上記の基本的なプロンプト設計のコツに加えて、特定の応用テクニックが有効です。
たとえば「対話の流れを管理するためのテクニック」や「創造的なアイデアを引き出すための工夫」などが挙げられます。
Zero-shot プロンプティング
モデルが特定のタスクや質問に対する事前の例なしに応答する方法で、モデルは与えられたプロンプトの内容のみを基に回答を生成します。
このテクニックは、モデルが広範な知識を持っていると仮定しますが、特定のタスクに対する特化したトレーニングは受けていません。
例: 「東京の主要な観光スポットをリストアップしてください。」
Few-shot プロンプティング
モデルに少数の例(たとえば、質問とその回答)を提供し、それを基に新しい質問に答えさせます。
この方法は、モデルが提供された例から学習し、類似の問題を解決する際にその知識を適用して特定のタスクに対してより適切に応答することを促します。
例:
質問: 「パリの主要な観光スポットは?」 回答: 「エッフェル塔、ルーブル美術館」
質問: 「ロンドンの主要な観光スポットは?」 回答: 「ロンドン・アイ、大英博物館」
Chain-of-Thought(CoT)プロンプティング
複雑な問題を解決するために、モデルに推論のステップを順に説明させます。
これにより、モデルの思考過程が明確になり、最終的な回答の理解が容易になることです。このテクニックは、特に複雑な問題や論理的推論が必要な場合に有効です。
例: 「500円で買えるりんごの数を計算してください。りんご一つあたりの価格が100円だと仮定します。」
Zero-shot CoT(Chain-of-Thought)プロンプティング
Chain-of-Thought プロンプティングの原則を適用しつつ、事前の例なしに推論の過程を説明させる方法です。
これにより、モデルは与えられた問題に対して、ゼロから推論プロセスを構築し、その過程を説明します。
例: 「もし500円でりんごを買うとして、りんご一つあたり100円だとしたら、いくつ買えるか説明してください。」
方向性刺激プロンプティング
特定の方向性や視点をモデルに示唆することで、回答の内容やスタイルをガイドします。
たとえば、より創造的、批判的、または特定の視点からの回答を求める場合に使用し、モデルの応答を特定のコンテキストやニーズに合わせるのに役立ちます。
例: 「環境に優しい交通手段について、その利点を強調して説明してください。」
再帰的修正プロンプティング
モデルの初期回答を基に、さらに質問を深めたり回答を修正したりすることで、より精度の高い回答を得る方法です。
このプロセスは、モデルとの対話を繰り返すことで、問題のより深い理解や適切な解決策を導き出します。
例:
質問: 「最も効果的な勉強法は何ですか?」
回答: 「分散学習が効果的です。」
追加質問: 「分散学習を実践する具体的な方法を教えてください。」
メタプロンプティング
モデルに対してどのように考え、回答を生成するべきかについての指示を含むプロンプトを提供するアプローチです。
モデルは与えられたタスクや質問に対して、より適切な戦略やアプローチを選択することができます。
メタプロンプティングは、モデルの柔軟性と適応性を高めるのに役立ちます。
例: 「この問題を解決するためには、まず関連する情報をリストアップし、それから最も可能性の高い解決策を選択してください。」
アナロジープロンプティング
モデルに対してある状況や問題を別の既知の状況や問題に喩えるよう指示します。
この比較により、モデルは新しい問題に対する理解を深め、既知の解決策やアイデアを新しいコンテキストに適用することができます。アナロジーは、創造的な思考や問題解決に特に有効です。
例: 「細胞を工場に例えて、その機能を説明してください。」
ハイブリッドプロンプティング
ハイブリッドプロンプティングは、ここまでに紹介した上記のテクニックを組み合わせることで、特定のタスクや問題に対するモデルの応答を最適化するアプローチです。
たとえば、Few-shot プロンプティングとChain-of-Thought プロンプティングを組み合わせることで、モデルがより具体的な例から学習し、その過程を通じて論理的な推論を展開することができます。
例:
質問: 「パリの主要な観光スポットは?」 回答: 「エッフェル塔、ルーブル美術館」
質問: 「ロンドンの主要な観光スポットは?」 回答: 「ロンドン・アイ、大英博物館」
質問: 「これらの情報を基に、東京の主要な観光スポットとその魅力を説明してください。」
クリティカルシンキングプロンプティング
モデルに対して提供された情報の信頼性を評価したり、異なる視点から問題を考察したりするよう求めます。
これにより、モデルは単に情報を再現するのではなく、その情報の妥当性を批判的に分析し、より深い理解や洞察を提供することが期待されます。
例: 「最近の研究によると、スマートフォンの使用が睡眠に与える影響について多くの議論があります。この研究結果の信頼性を評価し、他の要因が睡眠に与える影響と比較してください。」
これらのテクニックを駆使することで、ChatGPTの応用範囲をさらに広げることが可能です。
まとめ
プロンプトエンジニアリングは、AIの潜在能力を最大限に引き出すために不可欠な技術です。
明確かつ具体的な指示、背景情報の提供、適切な追加情報の提示などを通じて、より有用なAIの応答を得ることができます。
ChatGPTを含むさまざまなAIシステムでこれらの技術を活用することで、私たちはAIの真の力を解放し、より効率的で革新的な方法でタスクを遂行することができるようになります。
是非様々なプロンプティングのコツを使用、応用し、求める最適解に早く辿り着けるようチャレンジしてみてください。