対話型AIのGeminiは、精度の高い回答が特徴で、私生活やビジネスなど幅広く活用している人が多いです。
しかし、「もっと自分好みの回答が欲しい」「情報の真偽を確かめるのが面倒」など、改善したいと感じる人もいます。そこで開発されたのが、Geminiの新機能「Gems」です。
本記事では、Gemsとは何か、具体的な活用事例を解説します。Gemsを活用すれば、Geminiがあなたにとって最高のパートナーとなるので、ぜひ最後までご覧ください。
Geminiの新機能「Gems」とは?
Gemsとは、Googleが開発した対話型の生成AI「Gemini」をカスタマイズできる機能です。
そもそもGeminiでは、ChatGPTのように対話形式で以下のようなことができます。
- レポートやメールなどの文章作成
- 情報の検索
- 文章の翻訳
- プログラミング支援
上記のようにGeminiアプリは、さまざまな用途に使用できます。そのGeminiアプリをカスタマイズして、より効率的にしたり、より専門性を持たせたりできるのが「Gems」です。
複数のGemを作成できる
Gemsでは複数のカスタマイズを作成できます。
作成したそれぞれのカスタマイズを「Gem」と呼びます。
毎日のニュースをまとめてくれるGemや、指定したテーマに関する情報を集めてくれるGemなど、活用方法はさまざまです。
情報源を指定できる
Geminiアプリの回答は、インターネット上にあるすべての情報を元に作成されます。
さまざまな情報から回答を導き出してくれますが、信頼性の低いWebサイトの情報を参考にするデメリットもあります。
Gemsを使用すれば、指定したWebサイトのみから情報を取得して回答を作成可能です。
政府や官公庁・大学などが作成したWebサイトを指定すれば、信頼性の高い情報を得られるでしょう。
初心者でも簡単に利用できる
Gemsはプロンプトの作成が苦手な初心者でも、簡単に利用できます。
なぜなら、よくある機能が設定されたプリセットや、プロンプトの入力を補助する機能があるためです。
プリセットには、以下のようなものがあります。
- アイデア出しのプロ:広い視点からアイデアを提案してくれる
- キャリアアドバイザー:キャリアアップに関する計画や目標達成をサポートしてくれる
- コーディングパートナー:コーディングのチェックやアプリの作成をしてくれる
- 家庭教師:数学や化学・文学など新しい知識の取得をサポートしてくれる
- 編集者と校正役:文法のミスの修正や分かりやすく書き換えなどをしてくれる
これらのプリセットは、対話型AIのよくある活用事例を元に作成されています。
まずは、このプリセットを使用して、Gemsの性能を確認してみましょう。
Gems・GPTs・Projectsの違い
GeminiのGemsのように、対話型AIをカスタマイズできるサービスは他にもあります。Gemsとよく比較されるのは、以下の2つのサービスです。
- ChatGPTの「GPTs」
- Claudの「Projects」
それぞれの特徴を表にすると、以下のようになります。
カスタム | 無料利用 | 使いやすさ | 利用の共有 | 画像生成 | Phythonの利用 | APIとの連携 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Gems | 〇 | × | 〇 | × | × | 〇 | × |
GPTs | 〇 | 〇(制限あり) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
Projects | 〇 | × | △ | 〇 | × | × | × |
無料で利用できるのはGPTsだけですが、Gemsでは無料利用キャンペーンをしている場合があります。
無料利用キャンペーンでは有料版と同じ機能を使用できるため、制限のあるGPTsの無料版よりも優れているといえるでしょう。
Gemsはこんな人におすすめ
Gemsがおすすめな人は、対話型AIのカスタマイズが初めてな人です。
対話型AIのカスタマイズはプロンプトで指示をしますが、上手にプロンプトを作成できないと、狙ったように動作しません。プロンプト作成に苦労して、途中で投げ出してしまう人もいるほどです。
Gemsであれば、5種類のプリセットが用意されているため、初心者でもすぐにカスタマイズを体験できます。
対話型AIをより便利に使いこなすために、初心者はまずGemsから始めるといいでしょう。
Gemsは無料?有料?料金について
Gemsを利用するには、Googleのクラウドストレージサービス「Google One」に加入する必要があります。
Google Oneへの加入特典として、「Gemini Advanced」が利用できるようになり、Gemini Advancedの機能の一つが「Gems」です。
そのため、基本的にGemsを利用するのは、有料となります。
Gemini Advancedは、以下のようなメリットがあります。
- Geminiの進化版であるGemini Ultra1.0やGemini1.5 Proを利用できる
- モバイルに対応している
- 画像認識ができる
Google Oneの料金は、月額2900円です。
しかし、無料キャンペーンをしている場合があり、タイミングが良ければ一定期間無料で利用できます。
「Gems」の使い方
ここでは、Gemsの使い方を画像付きで解説します。
Gemsを利用するには、Gemini Advancedのトップ画面左下の「Gemマネージャー」をクリックします。
Gemsマネージャーとは、これまでに作成したGemやプリセットを管理する機能です。
Gemマネージャーを開いたら、「+Gemを作成」をクリックします。
新しいGemを開いたら、最初に名前を付けてから、カスタム指示を入力します。
今回は経済産業省の公式サイトからのみ、情報を取得するようにカスタム指示を作成しました。
カスタム指示の作成が完了したら、プレビュー画面でプロンプトを入力します。今回のプロンプトと回答は以下の通りです。
プロンプト:経済産業省の政策についてまとめてください。
上記の回答は経済産業省の公式サイトから情報を取得しているので、信頼性はかなり高いといえるでしょう。
Gemsは自分でカスタム指示を作成しなくても、プリセットを利用することができます。
プリセットは「Gemマネージャー」を開くと表示されます。
プリセットの場合はカスタム指示は必要なく、すぐにプロンプトを入力して質問が可能です。
試しに「アイデア出しのプロ」にプロンプトを入力してみます。
プロンプト:小学生低学年の子どもが楽しめる運動会の種目を考えてください
具体的な競技名と楽しみ方のアイデアを出してくれました。
小学生の低学年なので、安全にも配慮された種目が選ばれています。アイデア出しのプロを活用すれば、バラエティに富んだ種目を考えられるでしょう。
「Gem」の作り方
ここでは、Gemのカスタム指示の作り方を、分かりやすく解説します。
まずは、先ほど解説した通り、新しいGemを作成してください。Gemマネージャーの「+Gemを作成」をクリックすると、新しいGemが開きます。
新しいGemを作成したら、どのようにカスタムしたいのか指示を入力します。
今回は、「回答者は東北弁を話します」とカスタム指示を入力しました。
カスタム指示を入力したら、必ずGemを保存しましょう。保存をせずに他のページへ移動すると、入力内容が消えてしまいます。
作ったGemを使用する方法
Gemを保存すると、左側のメニュー欄に表示されます。先ほど保存した「東北弁のGem」は、プリセットの上に表示されています。
その他にも複数のGemを作成した場合は、同じ場所に追加されていきます。
使用するGemをクリックすると、プロンプトの入力欄が表示されます。質問したいことを自由に入力してください。
プロンプトを入力してエンターを押すと、AIからの回答が表示されます。今回は、以下のプロンプトを入力してみました。
プロンプト:ピタゴラスの定理について解説して
カスタム指示通り、東北弁でピタゴラスの定理を解説してくれました。今回は簡単な指示のみでしたが、もっと複雑な指示も可能です。
ちなみに、カスタム指示をしていないGeminiでは、以下のように回答されます。
Gemの編集方法
作成したGemの内容を変更したい場合、自由に編集が可能です。
Gemを編集するには、点が縦に3つ並んでいるボタンをクリックします。メニューが表示されるので「編集」を選んでください。
先ほど入力したカスタム指示が表示されるので、加筆や修正をおこないます。
カスタム指示の編集が完了したら、右上の「更新」をクリックしてください。
今回は東北弁での回答に加えて、「質問者と一緒に悩み、寄り添うように回答してください」と指示しました。
Gemの更新が完了したら、しっかりと反映されているか確認しましょう。
因数分解について質問してみます。質問者に寄り添うように回答してくれるのでしょうか。
プロンプト:数学の因数分解が分かりません。分かりやすく教えてください。
回答は東北弁を維持したまま、「遠慮なく聞いてけよ!」と優しさがあふれる内容になっています。カスタム指示通りの結果といえるでしょう。
Gemの削除方法
Gemを数多く作成すると、一覧への表示数が増えて、使用したいGemを選ぶのが大変になります。Gemが増えてしまった場合は、不要なGemを適宜削除しましょう。
Gemを削除するには、削除したいGemのメニューから削除をクリックします。
一覧から消えたら、削除は完了です。
Gemsの活用事例3つ
Gemsはカスタム指示次第で、さまざまなシーンで活用可能です。ここでは、Gemsの活用事例を紹介します。
1.食材を元に献立を考える
Gemsはカスタム指示により、食材から献立を考えることができます。日々の献立で悩んでいる方は、Gemsを活用することで毎日の献立を考える必要がなくなるでしょう。
カスタム指示は、以下のように入力しました。
質問者が入力した食材を元に献立を考えてください。
回答の条件
・日本で一般的な献立にする
・複数の献立を提案する
・質問者が入力した食材をメインに使用する
回答の様式
「料理名1」
「必要な食材」
「レシピ」
以下のように質問して回答を見てみましょう。
プロンプト:大根、ブリ、ネギ
食材名を入力するだけで、バランスの取れた献立を考えてくれました。
入力した食材以外の必要食材も記載されているため、買い物の役にも立つでしょう。
2.論文の要約
Gemsは要約の内容を指示できるので、利用目的に沿った内容で論文を要約できます。
学校のレポートや、仕事での資料まとめに役に立つでしょう。
カスタム指示を以下のように設定して、論文を要約してみました。
指定のURLの論文をレポート形式でまとめてください
条件
・2000文字以内でまとめる
・専門用語は分かりやすい言葉に置き換える
・レポートの構成は、①概要、②結論、③理由、④まとめとする
要約対象:経済産業省「起業家精神に関する調査報告書(令和5年度)」
調査報告書のURLを入力するだけで、内容が分かりやすく要約されました。要約の構成も指示通り、概要・結論・理由・まとめの順番になっています。
自分好みにカスタマイズを繰り返せば、資料のまとめに掛かる時間を減らし、業務を効率化できるでしょう。
3.複数の場所の天気を確認
Geminiに天気を聞く場合、通常は知りたい場所を1か所ずつ入力する必要があります。しかし、カスタム指示で複数個所を事前に登録しておけば、一度に複数個所の天気を確認可能です。
カスタム指示
今日の天気は?と質問されたら、以下の地域の天気をすべて回答してください。
・東京都練馬区
・大阪府大阪市
・福岡県福岡市
また、上記の地域で交通機関の乱れがあれば、一緒に教えてください。
プロンプト:今日の天気は?
複数の場所の天気を手間なく確認できるので、出張が多い人におすすめです。交通情報も一緒に教えてくれるので、移動が遅れてお客様を待たせることも無くなるでしょう。
まとめ
Geminiの新機能「Gems」とは、AIによる回答をカスタムできる機能です。例えば、以下のようなカスタムが可能です。
- 情報源の指定
- 口調の変更
- 要約の形式を指定
Gemsを利用するには、月額2900円の有料プランに加入する必要があります。しかし、無料キャンペーンが開催されている場合もあるので、小まめにチェックしてください。
Gemsは初心者でも利用しやすいように、プリセットが用意されています。カスタム指示の作成が苦手な人でも、気軽に利用できるでしょう。
Gemsを上手に活用すれば、あなたの仕事を効率化したり、日常生活をより便利にしたりできます。さまざまなカスタムを指示して、Geminiにいろいろな質問をしてください。