Google I/O 2025において、最新のテキスト生成AIであるGemini Diffusionが発表されました。
しかし、GeminiシリーズはProやFlashなど種類が多く、それぞれの違いが分からなくなってしまいます。
この記事では、Gemini Diffusionと既存モデルとの違いや、具体的な活用方法を画像付きで解説します。
Gemini Diffusionと他のモデルの使い分けができるようになるので、ぜひ最後までご覧ください。
Gemini Diffusionとは?

Gemini Diffusionとは、イギリスにあるGoogle DeepMind社が開発しているAIです。
最大の特長は、従来は画像や動画生成で用いられてきた「拡散モデル(Diffusion Model)」の手法をテキスト生成に応用している点です。
拡散モデルは、ランダムなノイズから段階的にテキストを洗練することで、最終的な回答を生成します。

このアプローチにより、従来主流だった自己回帰型モデルよりも回答の品質が高く、出力されるテキストの品質や一貫性が高く、さらに高速な生成も実現しています。
従来モデルとの違い
ChatGPTに使われているような従来のLLMは、自己回帰型のモデルです。



自己回帰モデルは、前の単語から次に使われる単語を予測して、順番にテキストを構築します。
例えば、「冬は」という単語の次には、「寒い」「12月」「つとめて」などの単語を予測するのです。また、「冬は寒い」という文章ができたら、また次の単語を予測していきます。
Gemini Diffusionの「拡散モデル」は、全体的にノイズを含んだ状態で文章を生成します。
ノイズを含む不完全な文章を段階的に整えていくことで、最終的に高品質なテキストが生まれます。
また、自己回帰型と異なり並列な処理が可能であり、生成速度が非常に速いのも特長のひとつです。
文章全体を俯瞰しながら調整できるため、整合性の取れた自然な出力が期待できます。
特長 | Gemini Diffusion (拡散モデル) | 従来型LLM (自己回帰型) |
---|---|---|
生成方法 | ノイズからテキスト全体を並列的に洗練 | トークンを一つずつ順次予測・生成 |
生成速度 | 高速 で生成可能 | 比較的低速 |
一貫性 | 長文でも高い一貫性を維持 | 長文で一貫性の課題が生じる場合がある |
自己修正能力 | 生成過程で迅速なエラー訂正が可能 | 逐次生成のため、エラー訂正が難しい |
編集・制御 | テキスト全体を対象とした編集・制御に優れる | 局所的な編集・制御に限定される |



このように、Gemini Diffusionは従来のLLMと比べて生成速度・一貫性・編集性の面で大きな優位性を持っています。
Gemini Diffusionの特長5つ
Gemini Difusionは、拡散モデルをテキスト生成に応用して、圧倒的な高速性を実現しています。
ここでは、Gemini Diffusionの特長を解説します。
1.拡散モデルをテキスト生成に応用
Gemini Diffusionは、画像や動画の生成などに活用される「拡散モデル」をテキスト生成に応用しています。
拡散モデルでは、まずノイズを含んだテキストを生成します。
そして、テキスト内のノイズを除去するプロセスを繰り返し、最終的に一貫性のある高品質なテキストを生成するのです。



拡散モデルのテキスト生成への応用により、従来の自己回帰型モデルのデメリットを克服して、さらなるブレイクスルーを生み出すでしょう。
2.圧倒的な高速性
Gemini Diffusionの特筆すべき点は、テキスト生成の高速性です。
Gemini Diffusionの拡散モデルと、従来の自己回帰型モデルの差は以下の通りです。
- Gemini Diffusion:平均1,479トークン/秒
- 従来の自己回帰型モデル:平均100トークン/秒
上記の数値の通り、Gemini Diffusionは14倍以上の高速性があります。



初期の拡散モデルは多くのステップを経て生成するのに対して、Gemini Diffusionは少数のステップで生成できるように最適化されています。
3.生成過程での自己修正
Gemini Diffusionは、テキスト生成の途中で誤りを素早く修正する能力を持っています。
拡散モデルはテキストを並列的に処理して、全体を洗練させていくフローを経るので、生成の途中で一貫性を評価してエラーを修正できます。
従来の自己回帰型モデルは、テキストを順番に生成していくため、あとからの自己修正は困難です。



Gemini Diffusionの自己修正能力は、質の高いコンテンツを生み出し、効率的な業務運営のサポートをしてくれるでしょう。
4.コード生成や数学的な処理に強い
Gemini Diffusionは文章の生成だけでなく、コード生成や数学的な処理にも向いています。
既存の高速モデルであるGemini 2.0 Flash Liteと比較した実験では、コード生成と数学的な処理で、同等以上のベンチマークを記録しました。



Gemini Diffusionは圧倒的な生成速度を維持しつつ、コードや数学的処理においても高い精度と一貫性を実現しており、実用面でも大きな強みを持つモデルです。
5.多様な文体・用途への対応力
Gemini Diffusionは人間が作ったような自然な文章を生成するだけでなく、さまざまな文体にも対応可能です。
- 論文に使われる堅い文章
- SNSでの親しみやすい文章
- 多くの人に刺さる広告の文章
- ビジネスでのフォーマルな文章
上記のような文体を使い分けられるので、さまざまな用途で使用できます。



文章の素案をGemini Diffusionに任せれば、人間の書き手は内容の推敲に時間を使えるでしょう。
Gemini Diffusionの料金体系
Gemini Diffusionは実験的なデモ版が提供されているため、2025年6月現在では無料で利用が可能です。
現時点では正式リリース日や、料金体系は公開されていません。
Gemini Diffusionの導入〜使い方
Gemini Diffusionの導入方法から使い方まで、わかりやすくお伝えします。
Gemini Diffusionは招待制のため、すぐに使用はできません。
まずは、Gemini Diffusionの公式サイトへアクセスして、順番待ちリストに登録する必要があります。
画面中央部の「Join the waitlist」をクリックすると、登録ページが開きます。
登録には、居住地域や使用目的に関する簡単なアンケートへの回答が必要です。
順番が回ってくると、アクセス許可のお知らせメールが届きます。
メール内のリンクからGemini Diffusionにアクセスすると、利用できるようになります。
なお、登録から招待までの期間は変動があります。



2025年6月時点では、おおよそ2週間程度で招待メールが届きました。
Gemini Diffusionにアクセスすると、トップページの画面下部にプロンプト入力欄があります。
通常のGeminiやChatGPTなどと同じように、プロンプト入力欄に質問を入力しましょう。
今回はサンプルのプロンプトに表示されていた「ホタル」をクリックしてみました。
すると、以下のプロンプトが自動入力されました。
プロンプト
限られた箱の中でホタルがランダムに移動するシミュレーションを作成します。スライダーでホタルの数を調整できるようにします。
すると、以下のようなコードがわずか約2秒で表示されました。



他の生成AIと比べても、明らかにスピードが高速です。
同じ画面内で、生成されたコードのプレビューも可能。
プロンプト通り、無数のホタルがランダムに動き回る様子が確認できました。
こんなことができる!Gemini Diffusion活用事例3選
Gemini Diffusionはゲーム作りやブログ記事の生成・長編物語の創作などに活用できます。
ここでは、Gemini Diffusionの具体的な活用事例を解説します。
1.ゲーム作り
Gemini Diffusionを活用すると、簡単なゲームもわずか数秒で生成されます。
生成されたゲームをベースに改良を加えれば、プログラミングの手間を大幅に削減できるでしょう。



今回は、試しに「じゃんけんゲーム」を作ってみました。
プロンプト
HTML+JavaScriptで「じゃんけん」をプレイできるWebアプリを作成してください。それぞれの選択肢に絵文字(🪨📄✂️)を使い、UIをネオンカラーや光り輝く未来的な雰囲気に仕上げてください。



このプロンプトを入力してから、わずか2.42秒でじゃんけんゲームが自動生成されました。
プレビュー画面で生成結果を確認すると、プロンプト通りのゲームになっています。



もし生成された内容が想像と違っていた場合でも、追加のプロンプトで微調整が可能です。
2.ブログ記事の生成
Gemini Diffusionは、検索結果で上位表示されやすいブログ記事をわずか数秒で生成できます。



その理由は、SEO(検索エンジン最適化)を考慮した文章作成が可能だからです。
企業がホームページに掲載するブログ記事では、SEOの知識が不足しているために上位表示されないケースが少なくありません。
しかし、Gemini Diffusionを活用すれば、手間をかけずに質の高い記事を作成でき、アクセス数の増加も期待できます。
プロンプト
「測定器 管理方法」をキーワードにした記事を作成してください。検索で上位表示されるようにSEOを考慮してください。



このプロンプトを入力してから、わずか約4.2秒で記事が完成しました。
生成された文章を確認すると、キーワードの自然な挿入や、見出し構成の工夫など、SEO対策を意識した内容になっていることが分かります。



今回はシンプルな指示で生成しましたが、「見出しの数を指定する」「導入文を200文字以内にする」など、より細かい指定も可能です。
3.長編物語を創作する
Gemini Diffusionは長い文章であっても瞬時に生成できるため、長編物語の創作ができます。
プロンプトで簡単な設定を与えるだけで、AIが細かな設定を考えて物語を展開してくれます。
プロンプト
5歳の少年を主人公にして冒険物語を作ってください。舞台は現代の日本でお願いします。
細かな設定を考えてくれた後に、物語の展開について相談がありました。
以下のようにプロンプトで返信します。
追加プロンプト
素晴らしい設定です。細かい描写はお任せします。
すると、物語の冒頭シーンを生成してくれます。



その後も、「もう少し感情描写を増やして」「次にピンチがほしい」など、要望を伝えることで、創作を一緒に進めていくようなやりとりが可能です。
Gemini Diffusionに関するよくある質問
ここでは、Gemini Diffusionを使う上で、よくある質問について解説します。
他のGeminiモデルとの使い分けは?
Gemini Diffusionの特長は、圧倒的なスピードと自己修正能力です。
そのため、素早くテキストを生成したい場合と、品質の高い文章が必要な場合はGemini Diffusionがおすすめです。



具体的には、論文やレポートの作成・プログラムの生成などに活用できるでしょう。
Gemini Diffusionは無料で使える?
Gemini Diffusionは招待制の実験的なデモとして提供されています。
そのため、順番待ちリストに登録して招待されると無料で利用が可能です。
Gemini 2.5やFlashとの違いは何?
Gemini DiffusionとGemini2.5(Pro/Flash)は、テキスト生成のメカニズムが異なります。
- Gemini Diffusion:拡散モデル
- Gemini2.5(Pro/Flash):自己回帰型モデル
それぞれのモデルは、用途や求める性能に応じて使い分けるのが最適です。
モデル | 生成方式 | 特徴・用途 |
---|---|---|
Gemini Diffusion | 拡散モデル | 高速・高一貫性・自己修正。論文/レポート/コード生成など |
Gemini 2.5 Pro | 自己回帰型モデル | 深い推論・高品質・複雑な問題解決。高度な分析・文書処理 |
Gemini 2.5 Flash | 自己回帰型モデル | 超高速・低コスト。チャットやリアルタイム処理に最適 |
まとめ
Gemini Diffusionは、拡散モデルを採用した最新のテキスト生成AIです。
現在は招待制となっており、順番待ちリストに登録し、招待を受けた人のみが利用可能です。
最大の特長は、高速かつ高品質なテキストを生成できる点にあります。さらに、自己修正能力が高く、コード生成や数学的な処理にも強いのが魅力です。
Gemini Diffusionは、ゲーム作りやブログ記事の生成・長編物語の創作といった幅広い用途で活躍できるツールです。
まずは順番待ちリストに登録して、Gemini Diffusionのスピードと表現力を体感してみてください。