近年、様々なAI(人工知能)が開発されていますが、AI開発に必須の作業である「アノテーション」を知っていますか?
本記事は、以下のような悩みを持つ方におすすめです。
- 「アノテーションって何?」
- 「どのアノテーションツールを使用すればよいかわからない」
今回は、アノテーションの概要やおすすめのアノテーションツールについて説明します。
本記事を読むと上記の悩みが解決されるだけでなく、活用事例を通じてアノテーションの理解・実践まで繋げることができるため、ぜひ最後までご覧ください。
「アノテーション」とはデータに注釈をつける作業
アノテーション(annotation)とは、「注釈」という意味の英単語です。AIの分野では、テキストや音声、画像、動画などのデータに、“タグ”や“メタデータ”と呼ばれる注釈をつける作業のことをアノテーションと呼んでいます。
AIシステム開発において、アノテーションは“教師データ作成”を指します。AIは、教師データをもとに分析や予測を行うため、アノテーションの精度によってAIの精度が決まると言えます。
※教師データ・・・入力されたデータに対して、正しい出力を記載した正解データ
アノテーションはどんな場面で役立つ?
アノテーションの概要を聞いただけではイメージが湧きにくいと思うので、アノテーションの具体的な事例を紹介します。
アノテーションの活用事例の1つとして、“工場の生産における製品の不良品検知”があります。
AIに良品と不良品の画像データを学習させることで、人よりも精度の高い検品が可能です。また、人件費などのコスト削減も実現可能になります。
アノテーションの需要が高まっている2つの理由
近年、アノテーションの需要が高まっているのは、「AI技術の開発」と「ビッグデータの管理」に必要だからです。
それぞれ、アノテーションが必要な要因について解説します。
1.AI技術の開発に重要な作業だから
これまでも既に述べてきましたが、アノテーションはAI技術の開発に重要な作業です。
AIの機械学習では、入力データの特徴やパターンから、どのように出力するのが正しいのか学習しなくてはなりません(教師データの学習)。
そのためには、アノテーションによって個々のデータを分類・パターン化する必要があります。そして、学習を繰り返すことでAIの精度が向上します。
2.ビッグデータの管理に必要だから
アノテーションはビッグデータの管理にも必要です。
ビッグデータは、ビジネスや組織の成長に役立つ重要なデータ群です。しかし情報量が膨大となるため、個々のデータをタグ付けし、必要な時に利用できるよう管理しなければなりません。
そこで必要となるのがアノテーションであり、アノテーションによってデータを分類・パターン化することで、ビッグデータの管理を効率的に行えるようになります。
アノテーションの具体的な種類
アノテーションの対象となるデータは、主に「画像・動画」、「音声」、「テキスト」の3種類に分類されます。
各データについて、アノテーションの特徴・概要、活用事例について説明します。
1.画像や動画データのアノテーション
画像・映像のアノテーションは主に以下の5つの種類に分類することができます。
- 物体検出(バウンディングボックス)
- 領域抽出(セグメンテーション)
- 多角形での領域指定(ポリゴンセグメンテーション)
- 目印の検出(ランドマークアノテーション)
- 画像分類(クラシフィケーション)
これらのアノテーションは、画像や映像の内容を正しく理解しなければ機能しません。そのため、正確にタグ付けされた大量のデータを活用し、機械学習のアルゴリズムに画像認識の学習を行わせる必要があります。
物体検出(バウンディングボックス)
画像データや動画データのアノテーションでは、物体を長方形で囲って検出しタグ付けします。物体をカテゴリ別に分類するため、画像・動画内に人間やモノが一緒に存在していても問題なく判別可能です。
領域検出(セグメンテーション)
物体を長方形で囲って検出するだけでは、対象とは関係ない情報も含んでしまいます。
そのため、厳密に対象だけを処理したい場合は、画像・動画データの1ピクセルごとにタグを設定し、領域の検出を行う必要があります。
領域の検出では、「人間は緑、車は赤、建物は黄色」というように、対象ごとに色分けして画像アノテーションしていくのが一般的です。
多角形での領域指定(ポリゴンセグメンテーション)
多角形での領域指定とは、画像・動画に映った物体の領域を多角形で囲っていくアノテーション手法のことです。多角形で領域を指定していくことにより、正確に領域をアノテーションできます。
目印の検出(ランドマークアノテーション)
目印の検出とは、顔認識において多く利用されるアノテーション手法です。
顔の表情から感情を読み取るAIで多く用いられます。
目、眉、鼻、口、輪郭など、より細かくアノテーションを行うことで、些細な表情の変化も検出することが可能になります。
画像分類(クラシフィケーション)
画像分類(クラシフィケーション)では、「人間は人物カテゴリ、猫は動物カテゴリ」というように、画像をカテゴリ別に分類してアノテーションを行います。
画像の内容を見てどのカテゴリに属するか判別するだけです。ほかの手法と比べて作業コストがかかりません。
ただし1つの画像に対して1つのカテゴリしか設定できないため、人間と動物が一緒に写っているようなデータを判別するのが困難です。
これら画像・映像のアノテーションは、「自動運転」や「顔認証」などに利用されています。
2.音声データのアノテーション
音声のアノテーションは音声認識によって音声を書き起こしたり、テキストと音声内容の整合性を確認したりします。音声会話中に出てくる「家」などの名詞や「うれしい」などの感嘆詞を、1つずつタグ付けしていくのが特徴です。
主に、コールセンターでのやり取りの記録やスマートスピーカーなどで高い精度を実現するために欠かせない作業といえます。
たとえば、コールセンターの場合、「イヤホン」「メーカー」といった名詞だけでなく、「あの」「えー」「うーん」といった感動詞も会話に用いられるため、それらを正しく理解しなければなりません。
そのために必要となるのが、ひとつひとつの単語の意味をタグ付けしていくアノテーションです。
3.テキストデータのアノテーション
テキストのアノテーションは、事前に定義された分類項目をもとにテキストの文章や段落をタグ付けします。これにより、PDF文書から特定の情報を抽出したり、ニュース記事をエンタメやスポーツなどのカテゴリに分類したりできるようになります。
テキストのアノテーションが用いられている例として、チャットボットがあります。
チャットボットは、テキストの意図を理解して自動応答するシステムです。
テキストの“意図抽出”をAIができるようにするためには、複数の文章に対してのアノテーション作業が必要となります。
アノテーションの有効的な作業方法
アノテーションを人力で行おうとすると、膨大なデータに対して手作業でタグ付けをする必要があります。この作業は非常に手間がかかるため、教師データの作成がなかなか思うように進みません。
そのため、アノテーションを実施する際は、「アノテーションの代行サービス」や「アノテーションツール」を利用することをおすすめします。
ここから、「アノテーションツール」について具体例とともに説明します。
【AI開発に役立つ】アノテーションツール5選
アノテーションツールとは、データのタグ付けによる教師データ作成を自動で効率的に行うためのツールです。
アノテーションツールを活用することで、さまざまな形態のデータに自動でタグ付けを行えるようになります。情報量が多く精度の高い教師データをもとにAIの開発を行えるようになるため、開発業務の効率化につながります。
1.FastLabel(日本製)
FastLabelの強みは、幅広いアノテーションの種類および出力形式が豊富です。
「画像・動画」「音声」「テキスト」など、アノテーションに必要な機能を網羅しています。
また、画像アノテーションであれば矩形、円、多角形、キーポイント、線、セグメンテーションなどのアノテーション種類をサポートしており、JSON、COCO、PascalVOC、YOLO、CSVなど多くのプロジェクトで必要とされる形式をサポートしています。
FastLabelは動作が軽快で、ページを読み込む際や、各メニュー間を移動する際もサクサクと表示されます。
無料プランが用意されており、5ユーザー・データ数1,000件・データサイズ500MBまでは無料で利用できるので、「小規模なプロジェクトチーム」に特におすすめです。
リンク:FastLabel(日本製)
2.Annostation(日本製)
Annostationの強みは、チーム単位の作業での使いやすさです。
WebベースのAIを用いた画像認識専用アノテーションツールで、アノテーション画像そのものにフィードバックを添付したり、進捗状況をリアルタイムでレポートしたり、管理業務の効率化を促進する機能が揃っています。
アクセスできるメンバーや実行可能なアクションを制限できるので、機密性の高いデータを扱う際にも安心して利用できるよ。
アノテーションの作業を複数人で管理することができるので、「管理体制を整えたいチーム」に特におすすめです。
リンク:Annostation(日本製)
3.harBest for Data(日本製)
harBest for Dataの強みは、アノテーションデータを簡単に作成できることです。
画像・動画・音声用のアノテーションツールであり、企業に代わり、データの収集・作成を全国のクラウドワーカーが行います。氏名・メールアドレスを登録すれば、無料で利用できます。
また、「harBest for Data」を使うことで、データチェックの自動化やツールを使ったデータの品質評価が可能になっています。
データの品質評価を行うことで、学習データ品質向上が見込めるのも嬉しいポイント!
アノテーションの作業を簡単かつ無料で利用できるので、「試しにアノテーションを実施したい方」に特におすすめです。
4.VoTT(海外製)
VoTTの強みは、動作が軽快かつUIが使いやすいことです。
画像・動画用のアノテーションツールで、OSはWidows、Mac、Linuxに対応しています。データセットはCNTK、PascalVOC、YOLO形式で出力できます。
ローカルまたはクラウドストレージプロバイダーへのデータのインポート機能や、ラベル付きデータをエクスポートする機能も搭載しています。
注意点として、タスク進捗の管理やチェック機能は備えていないため、複数抱えるプロジェクトの場合は別の方法で管理する必要があるよ。
初心者の方でも直感的にアノテーションの作業ができるので、「個人でアノテーションを始めてみたい方」に特におすすめです。
リンク:VoTT(海外製)
5.LabelBox(海外製)
LabelBoxの強みは、物体検出や領域抽出などの機能が優れていることです。
一定の利用量まで無料で使える画像用アノテーションツールで、画像の画素にタグ付けを行うバウンディングボックスや、関節点で人間を検出するポイント機能があります。
そのほか、CSVやJSON、Pascal VOC、COCOの形式での出力も可能です。
複数のアノテーション作業員に直接確認および調整できるため、プロジェクト全体の管理が容易です。
特徴的なアノテーション機能により、正確に対象の抽出ができるので、「細かい教師データを作成したい方」に特におすすめです。
リンク:LabelBox(海外製)
まとめ
それでは、本記事の内容を以下にまとめます。
- 「アノテーション」とは、データに“タグ”と呼ばれる注釈をつける作業のこと。
- アノテーションは、データを分類することによって、AI開発やビッグデータの管理に役立っている。
- アノテーションの対象となるデータには「画像・動画」、「音声」、「テキスト」などがあり、効率的にアノテーション作業をできるツールが存在する。
アノテーションは、AI開発やビッグデータ管理に必須の作業です。今後もアノテーションの需要は高まっていくと考えられるので、どんどん実践して学んでいきましょう。