2024年にAdobeが発表した最新の動画生成AI「Firefly Video Model」は、テキストや画像を元にプロフェッショナル品質の動画を自動生成できる革新的なツールです。
AIによる静止画生成が広く普及する中、ついに動画の領域にも生成AIの波が押し寄せてきました。
AdobeのFireflyシリーズはこれまでにも画像やベクター、デザイン素材の生成で注目を集めてきましたが、今回の「Firefly Video Model」は映像制作のワークフローを根本から変える可能性を秘めています。
本記事では、「Firefly Video Model」の基本情報をはじめ、その主な機能や使い方、さらには商用利用の可否や活用シーンについて、詳しく解説します。
実際に使用してみた所感や、利用時の注意点なども交えながら、読者の皆さまがこの最新ツールを自分に合った形で活用できるよう、丁寧にご紹介します。

Adobeの最新動画生成AI「Firefly Video Model」とは?

Firefly Video Modelとは、Adobeが2024年に発表した最新の動画生成AIであり、テキストや画像といった素材から自動で動画を生成できる画期的なツールです。
これまで画像生成で注目されてきたFireflyシリーズですが、今回は動画という表現力の高いメディアに対応したことで、さらに大きな関心を集めています。

特長は、映像制作の知識がなくても、高品質な動画を誰でも簡単に作れる点。
たとえば「夜の都会を走る車の映像」といったプロンプトを入力するだけで、数秒〜十数秒の短編映像を自動生成してくれます。
生成された動画には、被写体の動き、視点の変化、自然なカメラワークが含まれており、まるでプロが編集したような仕上がりです。
現在はパブリックベータ(オープンベータ)版として公開されており、正式リリースは2025年内と見られています。
Firefly Video Modelの主な機能・特長
Firefly Video Modelは、映像分野に特化した革新的な生成AIであり、従来の静止画生成ツールとは一線を画します。
「時間軸」という新たな要素を取り入れることで、動きのあるコンテンツの自動生成が可能になりました。
従来の動画制作では、脚本・撮影・編集といった複数の工程が必要でしたが、Firefly Video Modelを使えば、これらの作業を大幅に短縮・自動化することができます。
- テキストからの動画生成
- 画像からのアニメーション化
- 視点やカメラモーションの細かな設定
これにより、個人のクリエイターから企業のマーケティング部門まで、幅広い層にとって強力な制作ツールとなる可能性を秘めています。



それぞれの機能を以下で詳しく解説します。
1. テキストから簡単に動画生成ができる


Firefly Video Modelの代表的な機能のひとつが、テキスト(プロンプト)ベースでの動画生成です。
ユーザーがキーワードやシーンの説明を入力するだけで、それに合った映像をAIが自動で作成してくれます。
たとえば、近未来の夜景に空飛ぶ車が飛び交う映像が生成されます。所要時間はわずか数十秒〜数分程度と非常に高速です。



生成される動画は数秒程度のショートビデオですが、被写体の動きや周囲の環境、光の反射などもリアルに描かれており、初見ではAI生成とは気づかないほど自然です。
2. 画像を元にアニメーション付き動画が作れる


Firefly Video Modelは、テキストだけでなく画像を元にした動画生成にも対応しています。
静止画をアップロードすることで、キャラクターに動きをつけたり、背景にエフェクトを加えたりと、画像を“動きのあるコンテンツ”へと進化させることが可能です。
特に注目すべきは、イラストや写真に対して自然なカメラズーム、パン、アニメーション効果をAIが自動的に加えてくれる点。



これにより、シンプルな素材でも、視覚的に豊かな映像表現が実現できます。
3. 視点移動やカメラモーションも自由に設定可能






Firefly Video Modelでは、視点やカメラワークをユーザー自身が自由にコントロールできる機能も搭載されています。
たとえば、「カメラが上空から地上に向かってズームインする」「視点がキャラクターの背後から移動する」といった具体的な動きの指示をプロンプトとして入力することで、意図を反映したダイナミックな映像を生成できます。
これまでこうした表現には高度なスキルや専用ソフトが必要でしたが、Fireflyではプロンプト入力や直感的なUIだけで実現可能。この点が大きな革新といえるでしょう。



さらに本モデルでは、3D的な空間把握にも対応しており、奥行きや距離感のある映像表現も可能です。
従来の2D的な動きにとどまらず、没入感のあるリアルな映像体験を手軽に作成できるのも特長です。
Firefly Video Modelはどんな人におすすめ?
Firefly Video Modelは、映像制作のプロだけでなく、非デザイナー層やビジネスユーザーにも最適なツールです。



特におすすめしたいのは、次のような方々です。
- SNSマーケティングやプロモーションの担当者
- 短時間でインパクトのある映像が必要な場合、Firefly Videoは強力な武器になります。
- 動画編集に苦手意識のあるデザイナーやライター、営業担当者
- 複雑な編集操作を覚えることなく、魅力的なビジュアルコンテンツを作成できるため、業務の効率化に貢献します。
- 教育やEラーニング分野の担当者
- 教育の領域でも活用が期待されており、説明用ビデオやチュートリアルの作成を短時間で行える点は大きな利点です。



Firefly Video Modelは「簡単」「高品質」「高速」と三拍子そろったツールとして、幅広い分野での活用が進むでしょう。
Firefly Video Modelの料金体系
Firefly Video Modelの利用料金は、Adobe Fireflyシリーズの他のサービスと同様に、サブスクリプション制とクレジット制のハイブリッドモデルが採用される見込みです。
ただし現在はベータ版での提供となっており、動画生成機能に関する一般向けの価格詳細は未発表です。
とはいえ、参考としてFireflyシリーズの既存プランから、おおよその料金感をつかむことができます。



詳細な価格は未発表です。
プラン名 | 月額料金(税込) | 含まれるアプリ | 生成クレジット(月間) | 画像およびベクターの標準生成機能 | 動画および音声のプレミアム生成機能 |
---|---|---|---|---|---|
Firefly Standard | 1,580円 ※早期アクセス価格あり | Adobe Firefly | 2,000 | 無制限の利用 | 毎月の生成クレジットを使用して利用 ・5秒間の動画を20本生成、または ・6分間の音声と動画を翻訳 |
Firefly Pro | 4,780円 ※早期アクセス価格あり | Adobe Firefly | 7,000 | 無制限の利用 | 毎月の生成クレジットを使用して利用 ・5秒間の動画を70本生成、または ・23分間の音声と動画を翻訳 |
Firefly Premium | 31,680円 | Adobe Firefly | 50,000 | 無制限の利用 | 毎月の生成クレジットを使用して利用 ・5秒間の動画を500本生成、または ・166分間の音声と動画を翻訳 |
Creative Cloud コンプリートプラン | 7,780円 | Firefly + Photoshop、Illustrator、Premiere Proなど20以上のアプリ | 1,000 | 毎月の生成クレジットを使用して利用 (画像生成1回につき通常1クレジット) | 動画および音声の生成機能に制限あり |
Fireflyでは、「生成クレジット」と呼ばれる単位があり、動画や画像を生成するたびにクレジットが消費されます。
高解像度の動画や、長時間の映像生成、商用での使用を検討している場合は、有料プランの加入が推奨されます。



プランによっては利用上限に達するとアップグレードや追加購入が必要になるため、業務用途ではPro以上のプランが安心です。
Firefly Video Modelは商用利用OK


商用利用の可否は、多くのユーザーにとって非常に重要なポイントです。
AdobeはFirefly Video Modelについても、画像生成モデルと同様に「商用利用可能」と公式に発表しています。
ただし、使用にあたっては以下の条件があります。
- 生成されたコンテンツは、生成クレジットを通じて取得したものであること
- Adobeの利用規約に準拠していること
この条件を満たしていれば、企業やフリーランスがFireflyを使って、広告・SNS投稿・プレゼン資料などの商用コンテンツを制作・販売・公開することが可能です。



Adobeが独自に使用している「トレーニングデータに関する透明性」も評価されており、法的リスクを最小限に抑えた安全な生成AIとして注目されているため、ビジネス活用を前提としたユーザーにとっても、安心して使えるAIツールの一つでしょう。
Firefly Video Modelの始め方
Firefly Video Modelの利用を始めるには、まずAdobe Fireflyの公式サイト にアクセスし、Adobe IDでログインします。




ログイン方法は、メールアドレスのほか、GoogleアカウントやApple IDなど、複数のオプションから選べます。
使いやすい方法を選んでログインしましょう。


ログイン後は、FireflyのUIは非常にシンプルで直感的です。
画面上のプロンプト欄に生成したい動画の内容を入力し、生成ボタンをクリックするだけです。
出力された動画はその場でプレビューでき、ダウンロードや他のAdobeアプリケーションとの連携もスムーズに行えます。



インストール不要のブラウザベースのサービスであるため、PC環境さえ整っていれば、すぐに始められるのも大きな魅力です。
実際に使ってみた!Firefly Video Modelで出来ること
実際にFirefly Video Modelを使ってみた感想や注意点を紹介します。
1. テキストだけで本格的な動画が生成できた
まず試したのは、テキストプロンプトによる動画生成です。


「sunset beach with flying seagulls」という簡単な英語フレーズを入力し、生成ボタンを押すと、十数秒ほどで動画が完成しました。
注意点
動画生成中はブラウザを閉じないようにしましょう。


完成した映像は、夕焼けの海辺を背景にカモメが飛ぶ約5秒の映像で、光の移り変わりや波の動きが非常にリアルでした。



若干の粗さはあるものの、短くシンプルなプロンプトでここまでのクオリティが出せるのは驚きです。
プロンプトの言葉遣いや粒度を変えることで、出力される雰囲気も大きく変化します。
たとえば、以下のような長めの詳細プロンプトを入力した場合
stormy night in Tokyo, heavy rain pouring down reflecting vivid neon signs on wet pavement, bustling Shibuya streets filled with people holding transparent umbrellas, dynamic lightning illuminating skyscrapers, cinematic 4K quality, dramatic atmospheric lighting, realistic textures, detailed reflections, moody color grading, smooth camera movement
このプロンプトでは、雨や風のエフェクトが加えられた、よりシネマティックでリアルな映像が生成されました。



動画生成の速度は非常に速く、イメージ確認やプレゼン用の仮素材づくりにも最適です。
2. 画像に動きを加えて“生きたコンテンツ”が作れた
次に試したのは、画像ファイルをFireflyにアップロードし、動きを加える機能です。


使用した素材:Stable Diffusionで生成した人物イラスト
入力プロンプト:「wind blowing hair」「subtle camera zoom」
キャラクターの髪が風で揺れ、背景に緩やかなズームが加えられた短編動画が生成されました。



驚いたのは、動きの自然さでした。
まるで手描きアニメのように滑らかなモーションが加わっており、静止画が“生きたコンテンツ”に変わる感覚を味わえました。
素材に少し手を加えるだけで大きなビジュアルインパクトが得られるのは、クリエイターにとって大きな魅力です。
3. 詳細なプロンプトで生成精度が大きく変わる
Firefly Video Modelの操作は非常にシンプルで、プロンプトを入力して生成ボタンを押すだけ。
UIも視覚的で直感的に使えるため、初めてのユーザーでも迷わず操作できます。



ただし、「思った通りの映像が出てこない」と感じるケースもありました。その多くは、プロンプトの構成や表現の粒度に原因があるようです。
たとえば「A man walking in a forest」という単純な表現で生成してみます。



プロンプト通りではありますが動きが少ないと感じられませんか?
そこでプロンプトを「A close-up shot of a man walking through a misty forest with cinematic lighting」と詳細にしてみます。
やはり詳細に描写した方が、よりリッチな映像が生成されました。
つまり、ユーザー側がある程度“映像の脚本”を言語で描く意識を持つと、生成結果の精度は格段に向上します。
また、現時点では生成される動画の長さは短く、細かい編集は別のAdobeツールとの併用が必要です。



とはいえ、試用感としては非常に高機能で、短時間でインパクトのある素材を生み出せる強力なツールであることは間違いありません。
Firefly Video Modelが「使えない」と感じたときの対処法
Firefly Video Modelは先進的で魅力的なツールですが、使い始めたばかりのユーザーの中には「思ったように使えない」と感じることもあるかもしれません。
その多くは、プロンプトの書き方やベータ版ならではの機能制限が原因です。
よくあるトラブルと解決方法
- 動画が生成されない/エラーが出る
→ プロンプトの文法やキーワードを見直してみましょう。あいまいな表現やスペルミスが原因のこともあります。 - 動きが少ない、意図が反映されない
→ 抽象的すぎるプロンプトでは再現度が低くなります。カメラワークや雰囲気など、より具体的な描写を加えると改善されます。 - ブラウザが重い・表示が崩れる
→ FireflyはChromeやEdgeの最新版での利用が推奨されています。ブラウザの互換性や通信環境もチェックしてみてください。



それでも不具合が解消しない場合は、Adobe公式のフォーラムやサポートページを確認してみましょう。ベータ版特有の制限や不具合について、他のユーザーの事例や対応策が多数紹介されています。
もし、「自分の用途に合わない」と感じた場合でも、Adobeの他のツールとの連携を試すことで、思わぬ形で活用できるケースもあります。
Premiere ProやAfter Effectsとの併用により、生成動画を素材として使い、自分のスタイルで編集するという手法もおすすめです。



AIを万能な完成品生成ツールではなく、“素材生成の起点”と考えることで、そのポテンシャルを最大限に引き出せます。
Firefly Video Modelに関するよくある質問
Firefly Video Modelに関するよくある質問をまとめました。
- 日本語での利用は可能?
-
Adobeは他のFireflyシリーズ(画像生成など)において日本語での動画プロンプト入力にも対応しています。
しかし現段階では、簡単な英語フレーズを使うか、翻訳ツールを併用し、英語入力したほうがクオリティが上がります。
Firefly Video Modelのプロンプト入力は日本語入力が内部で英語に翻訳されるため、微妙なニュアンスがや言い回しが伝わらないのが原因かと思われます。 - スマートフォンからでも使える?
-
基本的にFirefly Video Modelはブラウザベースで動作するため、スマートフォンやタブレットからの利用も技術的には可能です。
ただし、様々なツールやコンテンツの表示がなされるため、見た目には少し狭く感じ、操作し辛いかもしれません。
実際の操作はPC(特にChromeブラウザ推奨)を使用し、スマホからは生成された動画の確認やダウンロードがメインの利用方法となるでしょう。 - Adobeの他のソフトと連携できますか?
-
Firefly Video Modelは将来的にPremiere Pro、After Effects、Photoshopなどとの連携を視野に開発されています。
すでにFireflyの画像生成機能はPhotoshopと統合されており、動画生成機能についても、今後のCreative Cloudアップデートで同様の統合が実装される可能性が高いです。
まとめ
Firefly Video Modelは、Adobeが次世代の映像制作を見据えて開発した、非常に完成度の高い動画生成AIです。
テキストや画像から誰でも簡単に短編動画を作成できるこのツールは、映像編集に不慣れな人でも、プロ並みのコンテンツを制作できるという大きな可能性を秘めています。
視点移動やアニメーション効果の自動追加など、従来の生成AIでは難しかった要素を自然なかたちで統合しており、その表現力は今後さらに進化することでしょう。
また、無料の生成クレジットが用意されており、商用利用も可能という柔軟な料金体系は、個人クリエイターから企業利用まで、幅広いニーズに対応しています。



現在はベータ版のため、一部に制限や不安定さが残る部分もありますが、正式リリースに向けてのアップデートにも大きな期待が集まっています。
動画というメディアがもつ情報量と表現力を、AIによって誰もが使える武器に変える──。
Firefly Video Modelは、まさにその第一歩を切り拓く存在と言えるでしょう。
動画制作に関心がある方は、ぜひこの最新AIツールを体験してみてください。